二度と戻らぬ飼い主の帰りを今か今かとひたすら待ち続ける犬「会いたいよう、会いたいよう・・・」

アメリカ、カリフォルニア州オンタリオに
住んでいた21歳のエイブラハム・マルティネスは
2016年5月10日、車の事故で亡くなった。
突然の出来事だった。
駐車場でエイブラハムの車は
猛スピードで突っ込んできた車に
後ろから追突されたのだ。
その衝撃で、反対側にいたトラックに突っ込み
彼の体は車から投げ出された。
エイブラハムの家族は皆この事実を受け入れることができず
嘘だと思いたかった。
悲しみと怒りで心が折れ
考えられないほどの絶望的苦しみに苛まれている。
それはエイブラハムがかわいがっていた
愛犬のジャックスも同様だった。ジ
ャックスはエイブラハムの遺影と遺品の前で
静かに待ち続ける。
そして誰か訪問者が来ると猛ダッシュで
玄関に行き、エイブラハム
じゃないことがわかるとうなだれて
家の中を探し回る。
彼は二度と戻らぬ飼い主が帰ってくるのを
今か今かと待っているのである。
姉のアレクサンドラ・マルティネスは
「家族それぞれの人生にあいたこの大きな
穴を埋めることなどとてもできない」
と語る。今はなきエイブラハム
ジャーマンシェパードのジャックスが
家にやってきたのは
生後6週間のとき。
ジャックスはすぐに
エイブラハムと切っても切れない仲になった。
「ジャックスは毎晩エイブラハムの頭の上で寝ていたわ。
大きくなると今度は自分がベッドを
占領するようになった。
庭でエイブラハムが洗車していると
いつも隣の長椅子の上に座り
弟やわたしが家の中に入るまで
エイブラハムのそばを離れようとしなかったの」
とアレクサンドラ。
仲睦まじくくらしていたマルティネスファミリー。
写真のハスキーはジャックスではなく先住犬。
エイブラハムの死以来
ジャックスはふさぎこむようになったという。
それはまったく彼らしくないことだった。
「ほとんどエサを食べなくなったし
誰かが訪ねて来ると、エイブラハムだと
思って大はしゃぎするの。でもエイブラハムじゃないとわかると
うなだれて去っていくわ。そして急になにかを
探しているように家の中を歩き回ったり
諦めたようにため息をもらしながら
エイブラハムの部屋のすぐ外で眠りにつくの」
今は亡きエイブラハムと愛犬のジャックス
妹のカッサンドラが撮影した1枚の写真は
打ちひしがれたジャックスの様子が良くわかる。
エイブラハムを偲ぶ写真が飾られた暖炉の下で
ジャックスは静かにふせっている。
エイブラハムの遺品には
彼のニオイがついていて
ここがジャックスにとって
一番彼を身近にかんじられるのだろう。
ジャックスはまたエイブラハムに
会いたくてたまらないのだ。
そしていつもエイブラハムが
そうしてくれていたように、
ギュッと抱きしめてもらいたいのだ。